(7)その症状、「あたる?」
私が大潟村に赴任して1年ちょっとたちました。申し訳ないですが秋田弁は私には難解です。解ったような顔をして相槌を打っていますが、ご高齢の皆さんが何気なく話す言葉がちっとも解らないことが時々あります。でもそれ以外にも独特の言葉遣いがあることに気が付きました。たとえば「よせる」です。長野県では「雪かき」ですが秋田では「雪よせ」ですね。診療をしていて時々耳にするのが「あたる」です。どうも脳卒中になって倒れることを言っているらしい。この言い方は秋田に来て初めて聞きました。
さて本題です。いつもと調子が違うので「あたる」のが心配できた、という方が時々いらっしゃいます。実はほとんどの場合、取り越し苦労なのです。具体的にみていきましょう。
まずは血圧がいつもより高いので、とおっしゃる方が多いですね。血圧は基本的に上下します。たまたま200になったからといってその場で何か起きることはまずありません。しばらくして下がればそれで良いのです。心配ないよ~そのまま様子見ていいよ~と軽くお話ししています。
頭痛で来る方もいらっしゃいます。頭痛はくも膜下出血の症状として有名です。確かにそうなのですが、それはどんな頭痛かというと「ハンマーで殴られたような強烈な頭痛が、何時何分何秒とはっきり言えるくらいに突然に始まる」ような頭痛なのです。最近頭が痛いんですよ~、なんていう程度ではありません。ちなみに脳梗塞や脳出血で頭痛がすることはほとんどありません。
めまいやふらつきで来る方もいらっしゃいますね。本格的なめまい発作はかなりつらいものですが、ほとんどは耳からのもので脳卒中とは関係ありません。ちょっとクラクラした、という方も多いですが(私もたまになります)、それこそ問題ありません。70歳台半ばくらいになるとクラクラする人はすごく増えますが、そのあと「あたる」ことはまず無いのです。
と言う事で、皆さんが気にするような症状は実は心配がいらないと言う事が分かっていただけたでしょうか。でも、一過性に麻痺が出た、呂律が回らなくなったなどの場合はすぐ病院に行きましょう、真夜中でもです。