(10)完全予約制 その背景は

 秋田厚生医療センター整形外科の外来が完全予約制になりました。初診についても紹介状と予約が必要だそうです。要は腰や膝が痛いだけでは気軽に受診しないでほしいという事です。「とうとう来たか」という感じですね。組合病院の整形まで行ったけど診てもらえなかったという声をちらほら聴くようになりました。皆さんは「何で?!」と思うでしょうが、これには深いわけがあります。
 私が以前勤務していた病院のお話をしましょう。その病院は秋田厚生医療センターより規模はずっと小さくて、整形外科医が実質二人しかいませんでした。彼らは朝から夕方までずーっと外来で診察をしています。入院の患者さんの回診は外来が終わってからです。そうすると全部仕事が終わるのは午後8時か9時。手術のある日はもっと大変で、そもそも手術が予定通りには始まりません。私が足首の大骨折をした時は予定が遅れに遅れて手術が始まったのは午後6時半、終わったのは午前1時半でした。緊急の患者さんだって来ますからもうめちゃくちゃです。そしてそれが毎日続きます。くたびれます。辞めたくなります。気合と根性では続きません。だからその病院では受付時間の制限をするようになりました。そのおかげで彼らは辞めずに済んでいます。
 秋田厚生医療センターの整形外科ももしかするとそんな状況に追い込まれているのかもしれません。あの病院の整形外科ならば、人工関節や脊椎の手術などの専門的治療をするのが本来の役割です。でもその役割がうまく果たせなくなっているのではないでしょうか? だとすれば、診療の質を担保し医師をつなぎ止めるには診療制限はやむを得ないと思います。病院としては苦渋の決断ですね。
 もともと腰や膝の痛みは簡単に治まる物ではなくて「付き合っていく」性質のものです。大きい病院で特別な薬をもらったらスカっと治る、なんてことは絶対にありません。ブラックジャックみたいな名医もいません。地元の整形外科の先生にじっくりと診ていただくのが良いのです。必要な時には紹介状を書いてくれます。地元医療機関と高機能病院をうまく使い分けて継続可能な医療体制を構築しないと、秋田からもっとお医者さんが減りますよ!