(11)その薬、多くない?

 「ポリファーマシー」って聴いた事ありますか? 最近テレビや新聞で話題になっていますが、いったい何なのでしょう? 
 「ファーマシー」は「薬局」、「ポリ」は「複数」なので、直訳すると「いくつもの薬局」です。お年寄りはいくつもの病気がある事が多いから、いくつもの病院にかかっていくつもの薬をもらっている人が多い。あっちの病院から糖と血圧の薬、そっちの医院から痛み止めと骨粗しょう症の薬、向こうの病院から頻尿の薬、なんていう具合です。実は、こうしてやたらに薬が増えてしまった事を「ポリファーマシー」と言っているのです。そう、あなたの事ですよ! 
 元来病気というものは「治す」のではなく「抑える」しかできないものが多い。「抑える」薬は効き目が切れると調子が元に戻ってしまうので、ずうっと飲み続けなければいけない。「高血圧」や「高脂血症」はその典型です。一つまた一つと病気が増えると、そのたびに薬が増えてしまう。用の済んだ薬はさっさとやめれば良いのだけれど、「念のため」とずるずる続けてしまう事もある。通院しているそれぞれの病院がこの調子でやると、ますます薬が多くなる。こうして「ポリファーマシー」ができあがります。
 具合が良いのなら薬が多くても問題は無さそうですがそうは行きません。薬が多いと副作用の可能性が増えますし、飲み合わせの悪い薬も中にはあります。あまりにたくさんの薬を飲み続けていると寿命が短くなるという調査結果もあります。やっぱり薬は必要最小限が良いのです。だからといって勝手に薬をやめるのは良くない。
 では、うまく薬を減らしてもらうにはどうしたら良いのでしょうか。まずはかかる病院・医院を1~2か所にまとめてしまいましょう。その上で、からだ全体の様子を分かってくれているお医者さんに、種類が多くなりすぎないようバランスよく薬を処方してもらう。これが良いと思います。いろんな科にかかっている時でも、内科のお医者さんならたいがいの薬は引き継いで処方してくれます。それから取捨選択してもらえば良いのです。薬が減るのは不安だという方もいますが、「絶対に必要な薬」は意外に限られているものです。
 よその病院でたくさん出ているお薬を安全に減らすのは私の得意技です。お薬が多いな、と思ったら気軽に診療所にお寄りください。相談にのりますよ。